照射径(スポットサイズ)を
理解する
― 効果・時間・痛みとの関係 ―
医療脱毛を調べていると、「照射径(しょうしゃけい)」という言葉を見かけることがあります。これはレーザーの強さや種類と同じくらい、脱毛の効果や施術時間、痛みに影響する大切な要素です。
この記事では照射径の基本から出力(パワー)や照射方式との関係といった一歩進んだ知識まで分かりやすく解説します。
1. 医療脱毛の「照射径」とは?
照射径とはレーザーが肌に当たる際の光の円の「直径」のことです。スポットサイズとも呼ばれます。この円の大きさが変わることで、一度にアプローチできる肌の面積やレーザーの届く深さが変化します。
そのため、脱毛したい部位や毛の質に合わせて、適切な大きさの照射径を選ぶことが効率的で安全な脱毛につながるのです。

2. 照射径の大小によるメリット・デメリット
照射径の大きさには、それぞれ得意なことと不得意なことがあります。
- 照射径が「小さい」場合
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◯ メリット
鼻の下や指、顔の凹凸がある部分など、細かい場所の施術に向いています。狙った場所にピンポイントで照射できるため、丁寧な施術が可能です。また極めて根深く太い毛などでは照射径が小さくないと処置できない場合があります。
◯ デメリット
一度に処理できる範囲が狭いため、背中や脚などの広い範囲を脱毛するには時間がかかります。また同じ効果を得る場合、大照射径よりも痛みが強くなります。
- 照射径が「大きい」場合
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◯ メリット
一度に広範囲を照射できるため、全身脱毛などの施術時間を大幅に短縮できます。また同じ効果を得る場合、小照射径よりもずっと痛みが弱くて済みます。
◯ デメリット
顔の細かい部分や骨ばった部位など、凹凸のある場所への正確な照射が難しくなることがあります。また非常に根深く太い毛の場合、効果が不十分なことがあります。
3. 【重要】出力・照射方式との関係性
照射径は単独で効果が決まるわけではありません。「出力」と「照射方式」との組み合わせでその真価が発揮されます。
照射径と「出力」の関係
レーザー脱毛では、毛根を破壊するために必要なエネルギーの強さ(出力)があります。ここで知っておきたいのは、「照射径が大きいほど、光は安定して肌の奥深くまで届きやすくなる」という物理的な特性です。
細い光(小さい照射径)は肌の内部で光が散乱しやすく、エネルギーが分散してしまいます。一方、太い光(大きい照射径)は散乱の影響を受けにくく、奥まで進む力が強いため、同じ出力でも広い範囲のより深い毛根にエネルギーを安定して届けることができます。
つまり、大きい照射径と高い出力を組み合わせることで、VIOなどの根深い毛にもより効果的にアプローチできるのです。
照射径と「照射方式」の関係
- 熱破壊式の場合
- 熱破壊式は強い出力のレーザーを1発ずつ当てる方法で、「照射径」は通常この方式の場合に使われます。照射範囲は丸いものが多いですが、四角い機種もあります。
- 蓄熱式の場合
- 蓄熱式は弱い出力のレーザーを連続で当て、じわじわと熱をためる方法です。この方式ではハンドピースを肌の上で滑らせるように施術します。そのためハンドピースの照射部の面積が施術のスピードに影響します。「照射径」という表現はあまり使用しません。一般的に蓄熱式の機器は、広範囲を効率よく温めることができるように設計されています。
4. 【部位別】適切な照射径の考え方
基本的には脱毛したい部位に合わせて適切な照射径を使い分けるのが理想です。
- 背中・脚・腕などの広い部位
- 弱い痛みで効率よく進めるために、比較的「大きい」照射径が使われることが多いです。
- 顔・VIO・指などの細かい部位
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細かい凹凸があり丁寧に施術するために、「小さい」照射径が適しています。ただでさえ痛みが強い部位なので「小さい」照射径の中で、出来るだけ痛みの少ない大きい照射径を選択します。
クリニックによっては部位ごとに機器や設定を使い分けて、最適な方法で施術を行ってくれます。
5. 特殊な場合
増毛化や硬毛化に対応する場合など特殊な場合は、小さい照射径でないと対応できないこともありますが、痛みは非常に強く、時間もかかり、ヤケドのリスクも大きくなります。
6. 照射径に関するQ&A
- Q.照射径が大きいほど痛いですか?
- 照射径が大きいと同じ効果を得るための単位面積当たりの出力は低くて済みます。このため照射径が大きいほど痛みは弱いです。不安な方はテスト照射で実際の痛みを確認するのがおすすめです。
- Q.照射径が大きいと、照射漏れが起きやすくなりますか?
- 照射漏れは照射径の大きさ自体より施術者の技術力に大きく左右されます。経験豊富な施術者であれば、照射径の大きさに合わせて適切にレーザーを重ねて当てるなど、照射漏れが起きないように工夫してくれます。
- Q.照射径は自分で選べますか?
- ほとんどのクリニックでは患者様自身が照射径を自由に選ぶことはできません。照射径は脱毛する部位やその方の毛質・肌質を医師や看護師が判断し、最も安全で効果的だと思われる設定を選ぶのが一般的です。
- Q.最近の脱毛機は、照射径が大きくなっていますか?
- はい、その傾向があります。痛みを弱く、施術時間を短くしたいというニーズに応え、ジェントルマックスプロプラスのように最大で26mmといった大きな照射径を持つ機器も登場しています。しかし、全ての最新機器がただ大きいわけではなく、細かい部分にも対応できるよう複数の照射径を使い分けられる多機能な機器も増えています。
7. まとめ
医療脱毛における照射径(スポットサイズ)は、単に「大きいか小さいか」だけでなく、「出力」や「照射方式」と深く関わり合いながら脱毛効果を左右する重要な要素です。
- ◯ 大きい照射径
- 施術が早く、根深い毛にも効果的で痛みも弱い。
- ◯ 小さい照射径
- 細かい部位の施術が得意だが痛みが強い。
これらの特性を理解した上で、信頼できるクリニックに相談することが満足のいく脱毛への一番の近道です。専門家はあなたの肌や毛の状態、部位に合わせてこれらの要素を複合的に判断し、最適な方法を提案してくれます。
この記事は医療脱毛ぼくらのクリニックの
吉田 元 管理医師が監修しています。