照射方式の違いを
理解する
― 熱破壊式と蓄熱式 ―
医療レーザー脱毛には、レーザーの「波長」だけでなく、その「照射方法」にも違いがあります。それが「熱破壊式」と「蓄熱式」です。
これらは毛を生やす組織のどこをターゲットにするか、どのように熱を伝えるかが異なります。この違いを知ることが効果の現れ方や施術中の痛み、ご自身の肌や毛の状態に合った方法を選ぶための重要なポイントになります。
1. 熱破壊式と蓄熱式の仕組みの違い
熱破壊式:高出力の1ショットで「毛根」を破壊
熱破壊式は強いパワーのレーザーを1ショットずつ当てて、毛の成長に欠かせない「毛乳頭」や「毛母細胞」といった毛根の組織を破壊する方法です。毛の黒い色(メラニン色素)に強く反応する熱を利用するため、ある程度太くてしっかりした毛に高い効果を発揮します。細すぎたり太すぎたりすると効果は弱くなります。

蓄熱式:低出力の連続ショットで「バルジ領域」にダメージを与える
蓄熱式は弱いパワーのレーザーを連続で当てて、肌の内部にじっくりと熱をためていく方法です。こちらは発毛の司令塔とも呼ばれる「バルジ領域」という部分にダメージを与えることを目的としています。熱破壊式に比べて毛の黒さに左右されにくいため、産毛や色の薄い毛にも効果が期待できます。

2. 熱破壊式と蓄熱式のメリット・デメリット
- (1)熱破壊式の良い点・注意点
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◯ 良い点
強いパワーで毛根を直接破壊するため、施術後1〜3週間ほどで毛がポロポロと抜け落ちることが多く、効果を早く実感しやすいのが一番のメリットです。特にワキやVIOなどの根深い毛に向いています。
◯ 注意点
強いエネルギーを使うため、施術中に「輪ゴムで弾かれたような」と表現される痛みを感じやすいです。ポロポロと毛が抜け落ちないと脱毛効果がないと思われることもありますが、そのような場合でも設定次第では毛が抜けた後に再生しない、あるいは生えてくる毛が細く色の薄いものになるといった効果があることがほとんどです。また、肌の色が濃い方や日焼けした肌にはヤケドのリスクがあるため使用できない場合が多いです。
- (2)蓄熱式の良い点・注意点
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◯ 良い点
弱い熱でじんわり温めるため、痛みが少なく、温かさを感じる程度であることが多いです。痛みに弱い方でも安心して受けやすい方法です。日焼け肌や色黒の方でも施術を受けやすいのもメリットです。
◯ 注意点
施術後すぐに毛が抜けるのではなく、次の毛が生えてこない、あるいは生えにくくなるという形で効果が現れます。そのため、効果を実感するまでに3〜4週間以上時間がかかることがあります。充分な条件であれば最終的な脱毛までの期間は熱破壊式と同等と言われています。
- (3)硬毛化のリスクについて
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硬毛化とはレーザーを当てたことで、逆に毛が硬く太くなってしまう現象のことです。産毛の多い背中や顔などで見られることがあります。はっきりとした原因はわかっていませんが、蓄熱式は毛包全体にやわらかく熱を蓄えるため、熱破壊式のような“中途半端な熱刺激”が少なく、硬毛化のリスクは熱破壊式より低いという考えもありますが、はっきりとした結論は出ていません。
熱破壊式は高出力のパルス照射で毛根を確実に破壊する反面、産毛や色素の薄い部位では不十分なダメージが硬毛化を引き起こしやすく、特にアレキサンドライト・レーザーやサロン脱毛で使用される光脱毛(熱破壊式の一種)などでの報告が多い点に注意が必要です。
3. 照射方法で見る代表的な医療脱毛機器
医療脱毛で使われる機器は、熱破壊式か蓄熱式、あるいはその両方の機能を備えています。
ジェントル・マックス・シリーズ
熱破壊式の代表的な脱毛機です。2種類のレーザー(アレキサンドライト・レーザーとヤグ・レーザー)を搭載し、様々な毛質や肌質に対応できます。パルス幅が最短2m秒と極めて短く、他に2種類のレーザーでこのような設定が出来る機種は今のところ世界のどこにも存在しません。照射と同時に冷却ガスを噴射して、痛みを和らげる工夫がされており、これもこの機種のみの独自の技術です。
ソプラノ・チタニウム
世界初の3波長同時照射蓄熱式脱毛機であるソプラノシリーズの最新機種です。独自の波長ブレンド技術で他の3波長同時照射蓄熱式脱毛機では不可能な「完全同時」照射が可能なため、さまざまな毛を同時に短時間で処置できるうえ、痛みが少なく、産毛にも対応できるのが特徴です。設定次第で熱破壊式としても使用でき、その場合も3種類のレーザーを同時に照射できます。
4. 【毛質・部位別】自分にはどっちが向いている?
剛毛(ワキ・VIOなど)が気になる方
毛が太く濃いことが多く、根深い毛も多いため、熱破壊式が特に効果的です。ただし、VIOは痛みを感じやすい部位でもあるため、痛みが心配なら蓄熱式を選んだり、麻酔を使ったりするのも良いでしょう。
産毛・細い毛(顔・背中など)が気になる方
こうした毛は色が薄いため、熱破壊式ではレーザーが反応しにくいことがあります。色の濃さに頼りすぎない蓄熱式の方が効果を期待しやすいと言えます。ただし非常に毛が細く色が薄い場合は熱破壊式アレキサンドライト・レーザーでの高出力設定の方が良い場合もあります。
全身脱毛をしたい方
全身には濃い毛と産毛の両方が生えていることが多いため、部位によって照射方法を使い分けてくれるクリニックが理想的です。「ワキは熱破壊式、背中は蓄熱式」のように対応してもらえればより効率よく脱毛が進められます。
5. まとめ
熱破壊式と蓄熱式、どちらも最終的な脱毛効果に大きな差はないと言われています。しかし、効果の感じ方や施術中の快適さには違いがあります。
どちらか一方が絶対的に良いというわけではなく、ご自身の毛質や肌質、痛みの感じやすさによって最適な方法は異なります。一番の近道は専門のクリニックでスタッフに相談し、ご自身の状態に合った方法を提案してもらうことです。カウンセリングで疑問や不安を解消し、納得のいく方法で脱毛を始めましょう。
この記事は医療脱毛ぼくらのクリニックの
吉田 元 管理医師が監修しています。